アメリカとアルゼンチンの両政府は5月28日、今年初めに世界保健機関(WHO)から脱退したことを正式に表明し、他国にも同様の対応を呼びかけた。パンデミック対応をめぐるWHOの不備や透明性の欠如を問題視し、新たな国際保健体制の構築を目指すとしている。
米ケネディ・ジュニア保健福祉長官とアルゼンチンのルゴネス保健相は、共同声明を発表し、両国が最近WHOを脱退した理由として「コロナによるパンデミックにおける不正行為と過失」を挙げた。
声明では、「WHOによるパンデミック対応は、構造的かつ運用上の深刻な欠陥を露呈し、国際的な信頼を損なった。科学に基づいた独立した国際的な保健リーダーシップの必要性が明らかになった」としている。
また、パンデミック初期の対応や一部の研究に関するリスクへの懸念を表明し、「WHOは重要な情報へのアクセスを各国に提供できず、迅速かつ効果的な対応を妨げ、世界的に深刻な影響をもたらした」と批判している。
両国の保健当局は、今後「成果、主権、すべての人々にとって安全な未来を重視する新たな国際保健協力体制」の構築を目指し、他国に対しても参加を呼びかけるとしている。
同日、ケネディ氏はXで、アルゼンチンのミレイ大統領と会談したと投稿した。両国のWHO脱退について協議し、「科学的根拠に基づき、全体主義的な傾向や汚職、政治的干渉を排除した新たな国際保健体制の創設」を進める意向を示した。
ただし、共同声明やケネディ氏の投稿はいずれも、この構想がWHOの代替機関となるのか、具体的な名称や枠組みについては明らかにしていない。
アメリカでは、トランプ大統領が2期目の初日にWHOからの脱退手続きを開始。アルゼンチンもミレイ氏が2月に脱退を表明した。
トランプ政権は、中国武漢発とされるコロナパンデミックへのWHOの対応の失敗、ならびに他の国際的な健康危機への不適切な対応を脱退理由に挙げていた。ホワイトハウスは「人口がアメリカの3倍にあたる中国のWHO拠出額が、アメリカの約10分の1にすぎない」とも指摘していた。
その数週間後、WHOは次なるパンデミックに備えたパンデミック条約を承認したが、トランプ氏の大統領令では「この協定はアメリカには拘束力を持たない」と明記した。
先週、ケネディ氏は改めて各国にWHOからの脱退を呼びかける声明を発表。中国(共産党)などが「自国の利益のためにWHOの運営に過剰な影響を及ぼしている」と批判し、アメリカが大幅に多くの資金を拠出しているにもかかわらず、運営が歪められていると指摘した。
なお、2020年にもトランプ氏がWHOからの脱退を表明したが、バイデン氏が2021年の就任後に撤回した。
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