米アップルのスマートフォン「iPhone」について、インドからの出荷台数が今年3月に中国を上回ったことが明らかになった。米CNBCがシンガポールの調査会社の推計として報じている。
同月のインドからの出荷台数は急増し、約440万台に達したのに対し、中国からの出荷は約430万台にとどまり、インドが初めて中国を上回った形となった。
さらに4月には、インドから米国へのiPhone出荷台数が前年同月比で76%増の約300万台となった。一方、中国からの出荷は76%減の約90万台にまで落ち込んだ。
このことは、アップルが米中間の貿易摩擦に伴う対中関税を回避し、サプライチェーンのリスクを分散するため、製造拠点を中国からインドへとシフトする「脱中国」戦略を加速させている事実を裏付けている。
同社は、主要サプライヤーであるフォックスコンが15億ドルを投資したことを背景に、インドでの生産能力を強化している。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道によると、アップルは2026年にも米国で販売するiPhoneの全量をインドで生産する計画で、2026年末までにインド生産を6000万台(米国向け5000万台とインド国内向け1000万台)に増やす目標を掲げている。
なぜインド? 同国の強みとは
世界最多の人口を抱えるインドは、重要な技術的スキルを持つ労働者を含め、大規模で安価な労働力があり、製造業にとって大きな魅力の一つだ。
国際通貨基金(IMF)によると、世界的なリセッション(景気後退)が懸念されるなかでも、インドのGDP成長率は堅調に推移すると予測されており、2027年には名目GDPが日本を抜いて世界第3位となると見込まれている。
インドは、購買力が高い中間所得者層の増加などにより、底堅い内需が支えとなって高成長が期待されており、iPhone生産拠点見直しの「チャイナプラスワン」において外資企業による電子機器産業への大型投資が続くベトナムと並ぶ。
またインド政府は「メイク・イン・インディア」政策を推進しており、外資企業に対する税制優遇やインフラ整備を進め、企業誘致を積極的に後押ししている。誘致の成功事例として、韓国のサムスン電子は、中国からスマートフォン組立工場をインドに移管した。
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