ホンダは20日、公式発表を行い、電気自動車(EV)に関する生産計画を大幅に見直す方針を示した。世界的なEV需要の鈍化やアメリカの新たな関税政策に対応し、これまで進めてきたEV重視戦略から大きく方向転換する。
2021年以降、これまでホンダはEVを次世代技術と位置づけ、2030年までにEVと燃料電池車(FCEV)をグローバル販売台数の40%、2040年には100%とする目標を掲げてきた。2022年にはEV専用プラットフォーム「Honda e:Architecture」や全固体電池の開発に注力し、北米・カナダのオンタリオ州でEVおよびバッテリー生産拠点の建設を計画。これらの取り組みは、電動化を推進する中核戦略だった。
特に、2026年投入予定の「ホンダ0シリーズ」が、AIを活用した運転支援やユーザー体験のカスタマイズによる「超パーソナライズド最適化」を目指す次世代EVとして注目されている。
しかし近年、北米市場でのEV販売が予想を下回っている。世界的なEV需要の鈍化を受け、フォードは2024年にF-150 Lightningの生産を縮小し、EV専用工場の拡張を延期。GMは2023年末にシボレー・ボルトの生産を終了し、2024年に大型EVの発売を延期。メルセデスは2024年、2030年までにEV100%とする計画の見直しを示唆し、フォルクスワーゲン(VW)も同年、一部EV工場の建設中止とコスト削減策を実施。一方、テスラや中国メーカーなどEVに注力する企業も存在し、市場の二極化が進んでいる。
撤退の背景には、バッテリーコストの高止まり、充電インフラの整備不足、消費者の価格・性能への不安が挙げられる。さらに、アメリカ政府のEV補助金制度の基準・適用範囲・今後の継続性が変動的で不明確であることも影響している。
価格や充電インフラへの懸念に加え、アメリカでの関税政策の強化リスクや為替変動により、ロイター通信によると、ホンダは営業利益が約5千億円減少する可能性を見据えている。
ホンダの取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏は、EVの市場減速を踏まえ、2030年時点のグローバルでのEV販売比率がこれまでの目標である40%を下回る見通しだと明かした。
「足元の需要が高いハイブリッド車については、2027年以降に投入する次世代モデルを中心に、EV普及までの過渡期を担うパワートレーンとして商品群を強化します。この軌道修正を着実に実行することで、2030年の四輪販売台数は現在の規模である約360万台を維持し、その中核であるハイブリッド車は約220万台を目指します」と三部氏は述べている。
ホンダの二輪事業は2024年度に2570万台を販売し、グローバル市場の約40%を占める好調な実績を上げた。この収益基盤を活用し、四輪事業の電動化投資を安定的に進め、EVとハイブリッド車の両立を図る。
ホンダは、EV市場の地域差や政策リスクに対応し、EVとハイブリッド車を両輪とする戦略を採用。「ホンダ0シリーズ」の開発を継続しつつ、市場ニーズに応じた段階的な電動化を進める。
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